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2019.01.01更新

「100年後にも通用するエコハウス」を考える/質疑応答集

100年後にも通用するエコハウスを考える

2018/11/09 ホテルメトロポリタン盛岡

質疑応答集

 

Q. パッシブハウス・ジャパン10周年の後、違うステージを目指すというお話がありましたが、どのような方向になるのでしょうか?

 

 具体的にこうというのはまだ何も決まっていないんですけれど、ほかの団体の方の意見も聞いて決めようかなと思っています(笑)

 

Q. 鎌田先生は、パッシブハウスはこれからどんなふうになるとお考えですか?

 

鎌田 パッシブハウス・ジャパンは10年一区切りで、次のステージに行きたいと言っているわけですよね。これからどうなるかって、そんなこと誰にもわからないよね。そして、森さんの話を、僕はこんな風に聞きましたよ。

 パッシブハウス・ジャパン設立時には、5年後にはパッシブハウスなんて当たり前のものになってるだろうと。そういうことを期待して動き出したけれど、全然らちが明かない。せめて10年後には何とかしたいんだけれど、という話でしょ。僕はそれを聞きながら、ああ、どうにもならんよと(笑)。日本という風土に高断熱高気密住宅を普及させるのに、僕はもう30年やってるんですよ。日本って、それほどハードルが高い。

 ドイツがあれだけ省エネ義務化のレベルを上げられるのは、ファイスト先生の功績も大きいと思いますね。パッシブハウスなんていうスウェーデンの住宅をドイツに建てるとは何事だ。ドイツはもっと暖かいんだぞという土壌の中に、パッシブハウスを持ち込んで、それが世界標準としてヨーロッパじゅうを席巻している状況。それに基づいて、国の基準もどんどん上げていっている。非常に合理的な考え方ですよね。

 日本政府はそれに比べてどうにもならないでしょ。だから森さんは10年で一区切り、また次の10年も同じことを繰り返さない限り日本って変わらないよ、僕はそう思いながら聞いてましたけれどね。

 

Q. では10年の一区切りの先はどのような方向に行くとお考えですか?

 

森 では逆に、皆さん、どこまで行けばパッシブハウスやっていただけます? どこまで行ったら諦めていただけますか? みたいな(笑)。

 

Q. どこまでというのはないんですけれど、私自身も性能のいい住宅をつくり続けてきたつもりなんですけれど、ただ、断熱厚はどれくらいがいいのかは、いまだにわからないんです。

 

質疑応答②

 

Q. 私は建築業界ではない一般の者なんですけれど、両先生の講演が聞きたくて、はるばる富山からやって来ました。私はDIYが趣味で、その趣味が高じて、今度セルフビルドでマイホームづくりに挑戦しようと考えています。両先生も研究誌などで、セルフビルドやリフォームなどをやられたとお聞きしているのですが、そのときに大変だったことや苦労されたところなどのポイントがありましたら、ぜひ参考にさせていただきたいのですが。

 

森 みかんぐみの竹内昌義さんはセルフビルドのワークショップなどやられてますけれど、私は結構慎重派ですね。自分でできることってやっぱり限られていると思うんですよ。プロじゃないので、クオリティは同じにならないじゃないですか。でも自分の家だから納得できるんですよね。ちょっと曲がっちゃったとか、コンクリート練り間違えちゃったとか…。

 自分の家だから妥協できますが、世代が替わっての次のオーナーになったとき、資産として価値を生み出してくれるんだろうかというところが、私としては疑問ですね。

 DIYの場合は限定される部分が多いんじゃないでしょうか。たとえば内装とか外装とかその辺はいいんですけれど、構造とか断熱気密はちょっと難しいのではないかと思います。大工さんをちょっと手伝いさせてもらうくらいの感じがいいのでは…。

 本来社会のストックとしての家づくりなので、セルフビルドというのは私は積極的にはお勧めしていないんですけれど、鎌田先生はいかがですか?

 

鎌田 在来木造って、世界の住宅の中では超プレハブ工法なんですよね。さらに、いまはプレカットできますから、基礎工事と建て方を大工さんに手伝ってもらえば、そのあとは全部セルフビルドでできると思うんですね。それで十分社会ストックになると僕は思っている。設計がきちんとしていればね。

 県立大の内田君がそこに来ていますけれど、あなた、高崎でやったことあるんだな? 高崎の一般のお施主さんで、クレテック金物を使った軸組で、セルフビルドで家を建てました。まあ、当時の高断熱高気密です。Q1.0住宅まではいかないレベルでしたけれどね…。

 実はセルフビルドでやると、そんなのいくらでもできるんですね。しかもいま、防火構造認定が変わって、木の外装が使えますから、木の外装にして断熱材張って、部分的にですよ。常に半分ずつやるってこともできちゃうし…。

 僕は一般ユーザーも大工さんも、新住協でそういう図面とか出していますけど、そういうものを見てやってみるのも手かなと思います。僕の「本音でエコハウス」を1週間もかけて読んでくれれば、大体できるんじゃないかという気がしますけれどね(笑)。

 

森 アメリカでは自分でつくりたいという人が結構多いですよね。しかも、本当に勉強してプロ並みにつくろうという人。時間をかけて、決して安くは上がらないんだけれど、自分でやりたいというのが動機なんですね。でも日本の場合は、お金を浮かしたいがためにセルフでやるっていう人も、中にはいるんじゃないですか。それは要注意かなと、私は思っているんですよね。

 でも、ご自身で完璧なものをつくりたい、時間がかかってもプロ並みの仕事をしていくという心構えをお持ちの方もいる。逆に、家ぐらい自分で何とかしちゃうぞという心構えを、本当は、日本人はもっと持つべきかもしれないですね。

 

鎌田 セルフビルドは、ヨーロッパでもアメリカでもずいぶんしっかりとやられています。問題は設計だから、最初の基本設計を設計事務所にきちんとお願いして、それができていれば、僕は十分できると思いますね。

 どんどんやったらいいんじゃないかな。安くならないと言ってますが、絶対安くなりますよ。めちゃくちゃ安くなります(笑)。だって、大工さんに払うお金の分を自分でやるわけだから、そこはゼロになる。アメリカやヨーロッパでセルフビルドをやっている人も、安くなることをかなり期待しているんじゃないかな。

 ところで話は変わりますが、実は、僕は森さんとは9年前に恵那で一緒にセミナーをやったことがあるんですが、今日はそれ以来初めてなのです。森さんもそうですよね。そして、僕のややこしい話を最初から最後まで聞いたのもたぶん初めてでしょ? 

 さっきずっと聞いていて、森さんってすごく強い女性だから、自立、オフグリッドみたいな話を聞くと、あ、この人はやっぱり世の中をピークで引っ張るトップランナーの役割を持っている人なのだなと思いましたね。

 事実、松山の「大間の家」は、非常に高いレベルを、非常に手馴れて、意外に安くやってくれたんですね。僕もあの社長に会いましたけど、あの人は新住協の会員と比べてもトップクラスの工務店をやっていて、普段からQ1.0住宅レベル-2、レベル-3くらいの家を100%供給している人なんですね。

 「大間の家」を意外に安くできたと言いましたが、実はわれわれもそれを目指しているわけです。あれくらいのレベルの家を、あれくらい安くつくれる人が新住協のなかにもいっぱい出てきて、それが普通にできるようになると値段はどんどん下がる。それをすごく期待しつつ、高いレベルを示しながら、これくらいの家をつくろうねと言っているわけです。そして、パッシブハウスという、もうちょっと高いレベルのものもどんどん建っていけば、そのうち安くなるなと思います。

 ファイスト先生も、材料は安くなると言っている。10年後には、Q1.0住宅レベル-3が、いまの省エネ基準住宅より坪1~2万円アップくらいでできてしまうという世界に行くのだろうなと思います。

 森さんの話を聞いていて、あ、そうか、ここが違うのかと思ったのは、森さんは、個人のレベルのトップランナーを作ろうとしているんだけれど、僕はマスとしてトップランナーを作ろうとしている。できれば国の政策に働きかけたいというのが僕のスタンス。

 平成11年の次世代省エネ基準は、新住協がなかったらできませんでしたよ。つまり、世の中では、もうすでにこのくらいの家は工務店でもつくっているよという実績があったから、国交省はあの11年基準を打ち出すことができたんです。

 でも国交省はずっと惰性で、工務店は技術もないし営業力もないし、金もないしという、ダメダメの評価。今回の省エネ基準義務化でも、あの義務基準を理解して申請できる人は工務店には半分もいないと、いまだに言っているわけですよ。そこが違う。僕らはちゃんとつくれる、工務店も地方の小さな設計事務所もちゃんとつくれるということを、マスとして示すことによって、国の政策を変えたい。

 さっきのオフグリッドの話ですが、北海道の武部建設の武部さんが、新住協でもオフグリッドやりましょうよと言ってきましたが、僕は一蹴しました。そんなの、馬鹿げている。電力会社から買って何が悪いと。

 原発は僕だって嫌なんですね。でも、そのうち電力自由化で新しい電力会社も出てくるし、何もオフグリッドなんて金のかかるものやらなくても、電力会社とつながりながら、省エネできるところはどんどんする。省電気するところは省電気するという方向で考えたほうがいいから、オフグリッドはナンセンスだと、僕はそのとき言いました。

 でも個としてのオフグリッドは、住宅としては面白いし魅力的。そしていざという時に超然と立っていられて、まわりの人たちを助けることができるというところには感銘を受けますが、それでもやはり、僕はオフグリッドはやりたくないなと思ったりして…。

 森さんは東北電力には一目置くと言いますけれど、僕もオール電化は猛反対です。北海道時代からずっとオール電化反対で、こういうセミナーで「オール電化ナンセンス」みたいなことをずっと言い続けてきたら、北電は新住協から脱退しました。

 東北電力は、僕が東北でセミナーをやる時は、社員が必ずスパイとして来ていますからね(笑)。新住協が青森でセミナーを頼まれて、僕が講師として行くことになったら、東北電力が断ってきました。僕が講師なら結構ですと…。じゃあ僕もやめる、新住協としても手を引くと言ったら、その後しぶしぶ折れてきまして、結局講師はやりましたけどね。電力会社は電力会社ですけれど、その担当者が素晴らしい人だったんですね。

 日本中の電力会社は同じ穴のムジナで、ちょっと困ったな(笑)。それを牛耳っている経産省が、もう少し頭の柔らかい、そして、原発の事は自民党に任せておいて、自分たちはもっと再生可能エネルギーのところをやっていこうやという役人が出てこないかなと、僕はひたすら願っているわけですね。

 今日は森さんの話を聞いて、いろいろ考えさせられるところがあったと同時に、僕らの路線でもいいなと、何となくそんな気がしました。まあどっちでもいいのですけれど、いちばん大事なのは、同じ方向に向かって行くこと。実はほとんど同じ事やっているのですけれどね。

 あまり敵対しないで、皆さんもあまり敵対を煽らないで(笑)。それぞれちょっと違うポジションで、同じ方向に向かってやっているというふうに見てくれるといいなと思います。これからも森さんとのコラボレーションの機会を、できれば増やしていきたいなと思いました。

 

司会 最後に鎌田節が炸裂して、本当はもうちょっとこれをネタにいろいろやりたいところなんですけれど(笑)。でもお二人に共通しているのは、宇宙船地球号のサスティナビリティだと思います。政府の補助金付きの政策に合わせてやっていくんじゃ間に合わないよということもありますから、今日のこの機会を、ご自分の発展にどうぞ生かしてください。

これをもって終わります。どうもありがとうございました。

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