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2019.01.01更新

2019年「年頭所感」

2019年「年頭所感」 東北住建株式会社 社長 及川秀貴

 

 新年明けましておめでとうございます。旧年中のご支援、ご高配に心から御礼もうしあげます。そして本年も倍旧のお引き立てがいただけますよう伏してお願いもうしあげます。

 

 昨年11月に盛岡市で住建会と弊社が、室蘭工業大学名誉教授で一般社団法人新木造住宅技術研究協議会代表理事の鎌田紀彦先生と、一般社団法人パッシブハウス・ジャパン代表理事の森みわ先生との講演会を催したところ、県内外から多くのご来集がありました。

 

 鎌田先生は「100年後にも通用するエコハウス」、森先生は「温熱性能の今世紀最終基準」がテーマで、両先生のご講演はこれまでの省エネ論議が漸進的な省エネ強化にとどまることに飽きたらない、「どこまでやればよいのか」という思いに応えるものでした。

 

 ところがこの催しから一月も経ないうちに、国交省は2020年からの省エネ基準全面義務化を延期しそうだとの報道がありました。延期の対象は延べ面積で300㎡以下の小規模住宅・建築物ということですが、新築される戸建住宅の多くはそこに含まれます。

 

 義務化を見送る理由に「省エネ基準などに習熟していない事業者が相当程度いる」があります。省エネ計算のできる建築士事務所は50%程度(日本建築士連合会調査)、中小工務店でも50%くらい(リビングアメニティ調査)らしく、そこへの配慮があるようです。

 

 また小規模住宅・建築物は新築の90%余を占めるので、省エネ建築に不慣れな業者が確認申請をすれば行政側の対応が大変だという懸念も働いたようです。欧米先進国に比べ大きく見劣りする基準の改善が官民一体的なラッダイト運動(※注)で阻止されている気がします。

 

 弊社の催事や弊社員が受講する講演会でお見かけする顔ぶれが固定的なことを気に懸けてきました。地元で名の通った建築士事務所が省エネ知識の乏しいことに唖然としたこともあります。学ぶ人は学び、そうでない方はそうでないままに終わるのでしょう、

 

 行政の施策は大きな影響力を発揮しますが、どうもそれ頼みでは我が国の省エネ基準の強化、温暖化ガスの削減という喫緊の社会的使命が果たせそうにありません。高性能住宅造りに積極的な建築士、小規模事業者はすでにかなりおられ、彼らとの協働が重要です。

 

 弊社は22世紀の視点で21世紀の我々が取り組むべきことを明確に認識し、多くの連携を求め、民間先行で今世紀最終の省エネ基準設定(デファクトスタンダード化)がなるよう、今後とも微力を尽くそうと思います。

 

 消費の成熟・少子化・経済の減成長といった問題が先々に影を落とす中、消費税増税の緩和策としてクレジットカード決済に2%のポイント付与が検討されています。これが実行されればキャッシュレス決済が一気に普及するでしょう。

 

 キャッシュレス決済の進行は、商流で直接的な対人関係を必要としないビジネスを増やし、物流で距離の長短を問題としないビジネスを増やすでしょう。ここにIT技術やWEBの活用が大きく関わってきます。

 

 IoT化が進むと知らないうちに自分がだれかに支配されかねない不安、怖れを覚えます。IT社会という言葉に人間性の希薄な無機的なものを感じるのはわたしだけでしょうか? どれだけAIが発達しても人間社会は人間のものだとこだわる自分がここにいます。

 

 住宅やビル等は建築中こそ建築物ですが、建ってしまえば不動産です。これから建つ建築物とすでに建っている不動産との両方にまたがる形でリノベーション市場が出て来ました。リノベ市場の担い手には人間関係の再構築を試みる動きが濃厚にあるようです。

 

 弊社の先代は社長退任時、レイモンド・チャンドラーという作家が作中でフィリップ・マーローという探偵に言わせた「タフでなければ生きていけない、やさしくなければ生きる資格がない。」を援用し、「強いものには雄々しく、弱いものには優しく」と言いました。

 

 東北住建の社員は時々この言葉を思い出し、人と人という間柄を至高の宝物とし、リノベ市場で人間どうしの新しい社会関係が生まれつつあるように、わたしたちのビジネス社会でも相互信頼が一段と濃密な、共存・協働がある社会の構築を目指したいと考えます。

 

 鎌田紀彦先生、森みわ先生のご講演は録音し、文字起こしをしました。両先生のご了承をいただいたので、その全文が弊社ホームページでご覧いただけます。

 

 結びに、皆様のご健勝とご多幸を心からご祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

 

※注:ラッダイト運動(1811~17年のイギリス産業革命期にイギリス中部・北部の手工業者たちが、生活苦や失業の原因を技術革新と機械導入によるものとして起こした機械破壊運動。ここでは、進めなければいけない改革、改善に抵抗する人々の動きの意。)

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